1.労働者派遣事業とは?


労働者派遣事業とは、雇用事業の一つです。

事業主(以下派遣元という)が、自分が雇用する労働者を自分のために労働させるのではなく、他の事業主(以下派遣先という)に派遣して、派遣先の指揮命令を受けて派遣先のために労働させる事業のことです。

この派遣元によって雇用される労働者のことを一般に派遣社員(はけんしゃいん)といい、雇用関係は派遣元と派遣社員の間に存在しますが、指揮命令関係は派遣先と派遣社員の間に存在するのが特徴でです。労働者保護の観点から、派遣できる業種、派遣期間の上限、派遣を業として行うための許認可制度など様々な規定が労働者派遣法により定められています。俗に人材派遣、もしくは単に派遣と呼ばれる事が多いです。




2.派遣事業の分類


2.1.特定労働者派遣事業

派遣元に常時雇用される労働者(自社の社員)を他社に派遣する形態です。(届出制) 一般労働者派遣の業者に比べると、派遣先として対応する企業・職種の幅は狭いですが、特定の事業所に対し技術者(主にコンピュータ・IT・エレクトロニクス・機械設計関連)などを派遣するような業者が多いです。 (スキルアップのための講習会が充実しているところが多い。)



常時雇用される労働者とは、
1 期間の定めなく雇用されている労働者
2 過去1年を超える期間について、引き続き雇用されている労働者
3 採用時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者
です。

新規採用する者も、1年を超えて雇用されると見込まれるのであれば、特定労働者として 派遣することができます。



2.2.一般労働者派遣事業

派遣元に常時雇用されない労働者を他社に派遣する形態です。(許可制) 臨時・日雇い派遣もこれに該当します。 一般的に「派遣会社」といえば、この形態の事業者が広く知られています。 (スキルアップのための講習会を用意していないところもある。)



3.労働者派遣事業の制限


労働者派遣のできない業務(「適用除外業務」といいます)が「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の 整備等に関する法律」(通称「労働者派遣法」)及びその施行令等によって決められています。

3.1.港湾運送業務


港湾における、船内荷役・はしけ運送・沿岸荷役やいかだ運送、船積貨物の鑑定・検量等の業務(港湾労働法(昭和六十三年法律第四十号)第二条第二号に規定する港湾運送の業務)  

3.2.建設業務

土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの準備の作業に係る業務  

3.3.警備業務

事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等における、または運搬中の現金等に係る盗難等や、雑踏での負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務(警備業法(昭和四十七年法律第百十七号)第二条第一項各号に掲げる業務)  

3.4.病院・診療所における医療関連業務

医師、歯科医師、薬剤師の調剤、保健婦、助産婦、看護師・准看護師、栄養士等の業務
ただし、以下の場合は可能である。
①紹介予定派遣
②病院・診療所等(介護老人保健施設または医療を受ける者の居宅において行われるものを含む)以外の施設(社会福祉施設等)で行われる業務
③産前産後休業・育児休業・介護休業中の労働者の代替業務
④就業の場所がへき地・離島の病院等及び地域医療の確保のため都道府県(医療対策協議会)が必要と認めた病院等における医師の業務  

3.5.弁護士、社会保険労務士等のいわゆる「士」業務

弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士の業務や、建築士事務所の管理建築士の業務等(公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士等の業務では一部で労働者派遣は可能)

上記1 .4に関しては、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(昭和六十年七月五日法律第八十八号)第四条、及び「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令」第二条で決められています。




●労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律

(昭和六十年七月五日)(法律第八十八号)

第四条 何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行つてはならない。

港湾運送業務(港湾労働法(昭和六十三年法律第四十号)第二条第二号に規定する港湾運送の業務及び同条第一号に規定する港湾以外の港湾において行われる当該業務に相当する業務として政令で定める業務をいう。)

建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。

警備業法(昭和四十七年法律第百十七号)第二条第一項各号に掲げる業務その他その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣(次節、第二十三条第二項及び第三項並びに第四十条の二第一項第一号において単に「労働者派遣」という。)により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務



●労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令
(昭和六十一年四月三日)(政令第九十五号)

第二条 法第四条第一項第三号の政令で定める業務は、次に掲げる業務(当該業務について紹介予定派遣をする場合、当該業務が法第四十条の二第一項第三号又は第四号に該当する場合及び第一号に掲げる業務に係る派遣労働者の就業の場所がへき地にある場合を除く。)とする。

医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十七条に規定する医業(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第一項に規定する病院若しくは同条第二項に規定する診療所(厚生労働省令で定めるものを除く。以下この条において「病院等」という。)、同法第二条第一項に規定する助産所(以下この条において「助産所」という。)、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第八条第二十五項に規定する介護老人保健施設(以下この条において「介護老人保健施設」という。)又は医療を受ける者の居宅(以下この条において「居宅」という。)において行われるものに限る。

歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)第十七条に規定する歯科医業(病院等、介護老人保健施設又は居宅において行われるものに限る。

薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)第十九条に規定する調剤の業務(病院等において行われるものに限る。)

保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第二条、第三条、第五条、第六条及び第三十一条第二項に規定する業務(他の法令の規定により、同条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として行うことができることとされている業務を含み、病院等、助産所、介護老人保健施設又は居宅において行われるもの(介護保険法第八条第三項に規定する訪問入浴介護及び同法第八条の二第三項に規定する介護予防訪問入浴介護に係るものを除く。)に限る。

栄養士法(昭和二十二年法律第二百四十五号)第一条第二項に規定する業務(傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導に係るものであつて、病院等、介護老人保健施設又は居宅において行われるものに限る。)

歯科衛生士法(昭和二十三年法律第二百四号)第二条第一項に規定する業務(病院等、介護老人保健施設又は居宅において行われるものに限る。)

診療放射線技師法(昭和二十六年法律第二百二十六号)第二条第二項に規定する業務(病院等、介護老人保健施設又は居宅において行われるものに限る。)

歯科技工士法(昭和三十年法律第百六十八号)第二条第一項に規定する業務(病院等において行われるものに限る。)


2 前項のへき地とは、次の各号のいずれかに該当する地域をその区域に含む厚生労働省令で定める市町村とする。

離島振興法(昭和二十八年法律第七十二号)第二条第一項の規定により離島振興対策実施地域として指定された離島の区域

奄美群島振興開発特別措置法(昭和二十九年法律第百八十九号)第一条に規定する奄美群島の区域

辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律(昭和三十七年法律第八十八号)第二条第一項に規定する辺地

山村振興法(昭和四十年法律第六十四号)第七条第一項の規定により指定された振興山村の地域

小笠原諸島振興開発特別措置法(昭和四十四年法律第七十九号)第二条第一項に規定する小笠原諸島の地域

過疎地域自立促進特別措置法(平成十二年法律第十五号)第二条第一項に規定する過疎地域

沖縄振興特別措置法(平成十四年法律第十四号)第三条第三号に規定する離島の地域