1.業界動向を把握しよう!
本サイトをご覧いただいている方には、特定労働者派遣事業の開業や事業進出を検討されている方、必要に迫られて特定労働者派遣事業の認可手続きを進めている方など、さまざまな事情で人材派遣業についてご検討されているのだと思います。
また、業種ごとに人材派遣業の動向やさまざまな問題がありますので、十分に業界動向を捉え、今後の事業進出の準備していただきたいと思います。
取り急ぎ、私に関係の深いIT業界動向について、「IPA人材白書2011」から引用し、要約したいと尾見ます。
引用元:IPA 『IT人材白書2011』 概要
http://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/activity/2011summary_of_ITHR.pdf
1.1.IT業界動向について
頭打ちの国内市場に加え景気悪化が影響
金融危機の影響で各業界市場規模が減少する中、平成20年のIT業界は横ばいで維持を続けてきました。不況の影響で民間企業の需要は減る一方、官公庁向けサービスや既存システムが業績を下支えする結果となりました。
一方で、平成21年に入り情報処理各社は軒並み減収減益を記録。近年の頭打ちの国内市場に加え、不況による民間需要の低迷が業績を圧迫しています。
NTTデータが単独首位 アジアなど海外展開にも注目
国内のIT業界の勢力図を見ますと首位はNTTデータ。業界内で唯一の売上高1兆円を誇り2位の大塚商会にも大きな差をつけています。
また、新日本製鐵、NEC、伊藤忠など大手企業の子会社として活躍するIT会社が多いのもこの業界の特徴。大手企業の資本を背景に首位のNTTデータの座を狙います。
将来的な国内のIT需要は頭打ちとなる試算。こうした動向を受け大手各社は海外への進出を模索しています。
業界首位のNTTデータは中南米企業の買収を積極展開。富士通もオーストラリアの会社を買収しました。また、近年ではアジア諸国でのITサービスへの需要が高く、市場規模の拡大を見越した提携も目立ってきています。
今後も大手を中心に海外への進出が続く見通しで、さらなる動向に注目が集まります。
IT人材の動向 ~より求められる人材の“質”の高度化~
昨年度調査では、IT人材の量的な不足感が弱まり過剰感が増加する傾向が把握されましたが、今年度は、量的不足感が一服する中で質的不足感はIT企業・ユーザ企業ともに強く、85%を超えています。
ユーザー企業のグローバル展開の情報システム発注先
ユーザー企業が事業を海外展開する際に業務発注の可能性があるITベンダーをみると、全体の18.7%が日系ITベンダーに、35.5%が現地拠点の日系ITベンダーに業務発注の可能性があると回答。
従業員規模別では従業員規模が小さくなるほど日本国内のITベンダー企業を頼る割合が高いです。
今年度の調査(2009年度実績)では半数以上の企業がオフショア開発取引額を拡大させる意向であり中長期的にみればオフショア開発は拡大傾向にあると言えます。
オフショア開発のコスト削減に成功している企業は、開発標準の策定・共有などのソフトウェア工学に基づく取り組みやオフショアベンダーの人材育成など取り組み実施しています。
ITベンダー企業からの2009年度オフショア開発実績は、調査開始意向初めての前年割れ。
2010年度のオフショア開発規模参考見通しは、大手IT企業の旺盛なオフショア開発活用意向を
受け、再拡大の見通しです。
オフショアのコスト削減効果は3割程度と回答した企業が37%と最も高く、2割程度と回答した企業と合わせると2/3の企業が2~3割のコスト削減を実現しています。
進捗遅延・納期遅延や品質トラブル対応等が、オフショア開発によるコスト削減未達成企業での特徴的なコスト増要因。
コスト削減未達成企業では、詳細な仕様書の作成をコスト増加要因とする割合が高いです。
オフショア開発コスト削減達成企業では、未達成企業と比較して、自社開発プロセスの共有とオフショアベンダー社員向けの研修の実施、オフショアベンダーとの長期的連携の項目で実施している割合が高い傾向です。
IT技術者がグローバル化に対して自分に有利に働くか、不利に働くかを尋ねたところ、従業員5001名以上の企業のIT技術者は53.0%が自分に有利に働くと思っているのに対し、それ以外の企業のIT技術者は自分にとって不利になると考えている。
多様な人材の活用 ~取り組みはまだ始まったばかり~
日本のIT企業はイノベーショナルなビジネスを起こす為に、突出した能力や技術をもつ人材を必要としています。
しかし実態は、イノベーションを起こす原動力となる「突出した人材」を確保できない、適切な処遇が困難、マネージメントする体制が未整備等の課題を抱えています。
調査によると未踏事業で輩出した「突出した人材」は様々な分野で活躍し、彼ら自身は「独創性」、「論理思考力」「課題解決力」が優れていると自己評価しています。
彼らはスペシャリスト・エキスパートとして、自らのアイディア・技術をいかして新たなイノベーションを起こそうという意欲は大いにある。その様な意欲を持つ彼らがモティベーションを高め達成感のある仕事ができる活躍の場・環境等を与えるとともに、戦略系人材、ソリューション系人材、投資家等を巻き込んだネットワークを形成することが、日本発イノベーションを創出する原動力になる。
ダイバーシティ・マネジメント~女性管理職不在の企業は50% まだ活躍の余地あり~
グローバル化を始めとして、IT業界にもダイバーシティ(多様性)への対応が必要になりつつある。技術分野の中でもIT業界には比較的多くの女性がIT人材として就職しているがその多くが活躍する前に離職してしまう。ダイバーシティ(多様性)への対応として、まず女性の活躍を推進することが有効であり、外国籍など次なるダイバーシティへの対応へ繋ぐ近道であろうと考えられます。
IT企業における女性の管理職比率は低く、管理職不在の企業も49.2%に上る。評価や期待度、管理職志向などについて男女の意識に大きな差はないが、IT企業は「女性は管理職になりたがらない」ことが課題と捉えている。女性IT技術者活躍推進の課題は、女性IT技術者と経営サイドや上司との認識の乖離であり、この溝を埋めることが1つのポイントです。
女性を始めとしたダイバーシティ・マネジメントとして、キャリアパスの提示と公正・公平な評価軸を明確にすることが有効である。IT企業では「プロフェッショナル認定制度」等の認定制度も運用され始めており、それらの制度をさらに発展させることで実現可能といえる。またそのような制度改革と同時に風土改革も重要であり、さらに多様性を受容し企業利益へ繋げる方向への意識改革も必要です。
IT人材の意識と環境~方向感を見極みかねているIT人材~
昨年度の白書では、IT人材個人の不安の原因の一つとしてIT企業が自社の方向性や将来ビジョンが見えないことが指摘されました。しかしながら、今年度の調査で企業が将来ビジョンに基づく人材育成戦略を社員に示していても、IT技術者がその人材育成戦略を認識している割合は、半数程度にとどまることが明らかになりました。
IT人材個人が将来キャリアに自信を持つためには、人材育成戦略の認識をはじめ、IT人材個人自身が生き残る術として自分を支えるスキル(強み)を見つけることが必要であり、そのスキルや技術の獲得への取り組みを続けることが重要です。
次の時代へ生き残る為に、キャリアアップを「何もしていない」から「何かする」に変化しないと未来は明るくならない。自分自身で積極的に様々な情報収集し、所属する企業の将来ビジョンを視野に入れながら、IT技術者個人が主軸となりスキル(強み)を強く、深く、広くしていくことが必要です。